ー 簡易ETRと通常GloBE計算で新たに求められる情報とは ー
簡易ETR1セーフハーバーおよび通常GloBE2計算で求められる情報の多くは、通常の連結決算では最終的に相殺・集約されてしまい、個別には管理されていない情報です。まず代表的なものが、国・法人単位での税金費用の内訳です。連結決算では、法人税等はグループ全体で合算表示されるため、国別・法人別の当期税金費用や繰延税金費用の詳細までは管理されていないケースが一般的です。しかしそれぞれの税金費用がGloBE上の「対象税額」に該当するのかを国・法人単位で認識する必要があります。特に、税額控除や免税・減免措置が、どの税金費用に含まれているのかを切り分けて把握する点が重要になります。
次に、恒久差異や一時差異の中身です。税効果会計上、連結決算では差異を「その他」や「調整額」として一括処理していることが少なくありません。しかしその差異が恒久差異なのか一時差異なのか、またGloBE所得に反映されるのか除外されるのかといった性質別の整理が求められます。これは、なぜ特定の国のETRが15%を下回るのかを、合理的に説明するために不可欠な情報となります。
さらに、優遇税制の内容と会計処理も重要な論点です。補助金や税額控除について、連結決算では営業外収益として処理したり、税金費用の減額として処理したりして終わることが多いと思われます。しかしその内容が「適格優遇税制3 (Qualified Tax Incentive)」に該当するかどうかにより、GloBE上の取り扱いが大きく異なります。同じ補助金であっても、所得調整になるのか税額調整になるのかによってETRへの影響が異なるため、内容理解が不可欠です。
また、繰延税金の発生理由と回収時期も、従来以上に重要になります。連結決算では繰延税金資産・負債を純額で管理し、回収時期を詳細に追っていないケースもあります。しかし繰延税金がどのような差異から発生し、いつ回収される見込みなのかを把握したうえで、GloBE特有の「5年ルール」などの制限に該当しないかをチェックする必要があります。
最後に、相殺消去されている連結調整(未実現利益、のれん償却、会計方針差異等)及び内部取引(棚卸資産取引、ロイヤルティ等)についての国別影響額の把握です。連結決算では消去されたそれらの調整を分解し、各国のGloBE所得にどのような影響を与えているのかを説明することが求められます。
簡易ETRセーフハーバーの判定であっても、将来の通常GloBE計算を見据え、必要な情報を毎期確認できるような体制を整備していくことが、企業経理担当者にとって重要な実務対応といえるでしょう。
ー 移行期間CbCRセーフハーバーと簡易ETRセーフハーバーの優先順位ー
グローバルミニマム課税では、セーフハーバーとして移行期間CbCRセーフハーバー4(TCSH)と簡易ETRセーフハーバー5の二つが用意されていますが、両者には明確な優先順位があります。具体的には、同一の国・同一の年度について両方のセーフハーバーを併用することはできず、まずTCSHの要件を満たすかを確認し、満たさない場合にのみ簡易ETRセーフハーバーを選択するという順序が採られています。これは、TCSHがグローバルミニマム課税導入の事務負担を軽減するための移行期の特例措置として位置づけられているためです。正確に理解をしておくことが重要です。1 ETR : Effective Tax Rate実効税率
2 GloBE: Global Anti-Base Erosion 国別に最低15%の税負担を要請する国際課税の計算ルール
3 GloBEルール上、一定の要件を満たすものとして認められ、実効税率(ETR)の算定において特別な取扱いが認められる税制上の優遇措置をいう。
4 移行期間CbCRセーフハーバーとは、CbCRデータに基づき低リスクと判定された国について、移行期間中はGloBE計算を省略できる特例措置である。
5TCSHが簡易ETRセーフハーバーに優先することは、OECDのInclusive Framework “Administrative Guidance on the Global Anti-Base Erosion (GloBE) Rules-Side-by-Side Package” (2026年1月5日)パラグラフ27~33に説明がある。
