インドネシアでは、2025年12月30日付で、財務大臣規則第112号(2025年)(以下「PMK 112/2025」)の施行により、租税条約の適用手続に関する枠組みが改訂され、従来の形式的要件中心の制度から、実体(substance)重視の制度へと移行しました。本規則は、租税条約に基づく源泉税の軽減税率や免除の適用に関し、適用要件および手続の双方に重要な変更を導入しています。
規則の概要
適用要件
インドネシアの租税条約ネットワークの下では、非居住者が軽減税率または免税の適用を受けるためには、現地税務当局が発行した居住地証明書(Certificate of Domicile)とともに、税務総局(DGT)様式(以下「DGTフォーム」)を提出する必要があります。非居住者は、当該DGTフォームをインドネシアの源泉徴収義務者のCore Tax アカウント1を通じて提出し、以下の事項を確認しなければなりません:- 自己がインドネシアの居住者(内国納税者)ではないこと
- 租税条約相手国の税務上の居住者であること
- 租税条約の濫用に該当しないこと
特に3点目については、新たに実体要件の導入を意味しており、納税者は以下のような実質的要素を備えていることを示す必要があります
・能動的な事業活動
・資産および従業員
・受益者としての地位等
また、取引の主たる目的が租税条約上の利益の享受にある場合には、条約の適用は否認され、国内法に基づく源泉税率(20%)が適用されます。
濫用防止規定
PMK 112/2025は、以下のような包括的な濫用防止措置を導入しています:- 受益者(Beneficial Ownership):受領者は、インドネシア源泉所得の実質的な受益者である必要があります。本規則では、最終的な受益者の判定基準が明確化されています。
- 特典制限条項(LOB:Limitation on Benefits):条約上の特典適用可否は、当該条約に定める要件に基づき判断されます。例えば、受領者が当該所得の50%超を他者へ移転する義務を負っていないことが重要な指標とされます。
- 主要目的テスト(PPT:Principal Purpose Test):契約、合意、スキームまたは一連の取引の主たる目的が、直接または間接に租税条約上の利益を得ることにある場合、条約の適用は否認されます。
- 恒久的施設(PE)回避の防止:以下のようなスキームによるPE認定の回避に対し、詳細な防止規定が導入されています。
・コミッショネア契約
・契約分割
・関連者(50%超の支配関係)を利用した構造
また、「準備的・補助的活動」に該当するか否かについても明確化されています。
DGTフォームの変更点
2018年の旧ガイダンスと比較した主な変更点は以下のとおりです:| トピック | 旧ガイダンス | 新ガイダンス |
| 様式の簡素化 | 7セクション | ・6セクションへ削減 ・実体および受益に関する質問はPart Vに統合 |
| 用語の変更 | ・Double Taxation Convention ・Country |
・Double Taxation Agreement ・Country / Jurisdiction (国際基準に整合させるため) |
| 租税条約の濫用 | 明示的な規定なし | ・非居住者は、濫用に該当しない旨を明示的に確証する義務 ・ 判断指標として、経済的実体、法的形態、資産、従業員、事業活動、受益等が追加など、より明確な指標が追加 |
実務上の留意点
インドネシア税務当局は、DGTフォームの提出時点では、その正確性や完全性を即時に審査しません。したがって、以下の事項を確実に満たす責任は非居住の納税者側に帰属します:
- 租税条約上の適用要件を全て満たしていること
- 租税条約の濫用が存在しないこと
- DGTフォームへの正確な情報開示
著者:
Irwan Kusumanto
Octa Surya Fatra
Suwenny Leonardi
(BDO インドネシア)
1Core Tax アカウント(コアタックス・アカウント):主にインドネシアの新しい税務管理システム「Core Tax Administration System (CTAS)」において、納税者(個人・法人)が電子的に申告、納税、および納税者情報の管理を行うための専用アカウントをいいます。(引用先:https://www.bdo.co.id/en-gb/insights/what-you-should-know-about-coretax)
※ 本記事はBDO Globalが提供するTax Newsletter「Corporate Tax News - Indonesia - Procedures to Access Tax Treaty Benefits Now Include Substance Requirements」の日本語訳です。用語や表現に対するチェックを行っていますが、正確性や完全性を保証するものではありません。正確な情報は原文記事(英語)をご確認ください。
