ニュージーランド歳入庁、移転価格文書化ガイダンスを改訂

(BDO Global Newsletter – 2026年10月)

ニュージーランド歳入庁、移転価格文書化ガイダンスを改訂
2026年3月31日、ニュージーランド歳入庁(Inland Revenue、以下「IR」)は、移転価格文書化に関するガイダンスの改訂版を公表した。今回の改訂では、ニュージーランドにおいて「十分な移転価格文書」とみなされる基準について、当局の考え方がより明確に示されている。

もっとも、ニュージーランドの移転価格税制そのものに法改正はない。今回の改訂は、特に裏付資料の品質やニュージーランド向けのローカライズの適切性に関する当局の期待水準を明確化し、強化したものである。そのため、本改訂は法制度上の方針転換ではなく、IRが近年継続的に実施している移転価格コンプライアンスプログラムの一環として位置付けられる。


新たな提出義務は導入されず、文書化への期待を明確化

ニュージーランドでは現在も、移転価格文書を法人税申告書とともに毎年提出する義務は課されていない。
しかしながら、
  • 移転価格に関する立証責任は納税者にあること
  • 納税者は、自ら採用した移転価格方針を裏付ける文書を整備しておく必要があること
  • 当該文書は、通常、リスクレビューや税務調査の一環として要請された場合に提出しなければならないこと
が改めて強調されている。
また、文書化が不十分である場合には、IRが提示する代替的な独立企業価格に対して反論することが困難となる。

これらは、ニュージーランドの自己申告制度の下で従来から求められていた事項である。しかし、今回のガイダンスでは、品質の低い文書、不完全な文書、あるいはニュージーランド向けに十分なローカライズが行われていない地域本部や本社主導の文書について、そのリスクがより明確に示されている。

この変更は、理論的な制度変更というよりも実務上の運用強化であり、国際的な移転価格執行強化の潮流とも軌を一にするものである。
 
「ニュージーランド固有」の分析を重視
今回のガイダンスの大きな特徴の一つは、ニュージーランド固有の実態に即した分析を重視している点である。

IRは特に、以下への過度な依存に懸念を示している。
  • 本社または地域統括会社で作成された「地域共通」または「グローバル共通」のローカルファイル
  • ニュージーランド法人の実際の事業運営を反映していない画一的な機能分析
ガイダンスでは、以下の点が改めて強調されている。
  • 文書はニュージーランド法人の実態に応じて適切にローカライズされなければならないこと
  • ニュージーランド事業に関する十分かつ具体的な情報を含む必要があること
  • 現地経営陣が事実関係の正確性を確認すること
  • グローバル文書とニュージーランドの実態との間に不整合や記載漏れがある場合には、税務調査リスクが高まること
ニュージーランドは引き続きOECD移転価格ガイドラインと整合的な移転価格制度を採用している。しかし、IRはOECD準拠の文書であるという理由のみで十分な文書化と認めるのではなく、その内容がニュージーランドにおける事実関係およびリスクを適切に反映しているかを精査する姿勢を明確に示している。
 
ペナルティ適用に関する表現を厳格化
今回の改訂における最も重要な変更点の一つは、ペナルティに関する表現の変更である。

従来のガイダンスでは、不十分な移転価格文書はペナルティにつながる「可能性がある」とされていた。
一方、改訂後のガイダンスでは、不十分な文書化の結果として移転価格調整が行われた場合、過少申告ペナルティ(shortfall penalty) が適用される可能性が「極めて高い」と明記されている。
特にIRは、
  • 適切な移転価格文書を作成していない場合
  • 明らかに不適切な価格設定を受け入れている場合
には、「重大な不注意(gross carelessness)」として40%の過少申告ペナルティが課される可能性があることを指摘している。

新たなペナルティ制度が導入されたわけではないが、文書化不備に対する当局の許容度が低下していることを明確に示す内容といえる。
 
実務上の影響
重要な重要なクロスボーダーの関連者間取引を有するニュージーランドの納税者にとって、今回のガイダンスは以下の実務的なポイントを改めて確認するものである。
  • 採用した移転価格方針を裏付ける文書を適時に作成すること
  • ローカルファイルを定期的に見直し、機械的に前年版を踏襲しないこと
  • 機能分析、リスク配分およびベンチマーク分析について、ニュージーランド法人の財務諸表および実際の意思決定プロセスとの整合性を確保すること
  • グローバル文書を利用する場合には、ニュージーランド向けの追加的な分析・説明(overlay)を付加すること
既に堅牢な年次レビュー体制を構築している企業にとっては、今回の改訂は従来のベストプラクティスを再確認する内容である。一方で、十分な文書化を行っていない企業にとっては、移転価格文書が防御的な資料に留まらず、重要なコンプライアンス要件として位置付けられることを意味する。

 
BDOの見解
ニュージーランドの移転価格税制そのものに変更はないものの、今回のガイダンス改訂は、IRが移転価格文書に対してより高い品質と実態適合性を求める姿勢を明確に示したものである。

今後、適時に作成された質の高い移転価格文書が、リスク評価、税務調査およびペナルティ適用の判断において中心的な役割を果たすことが想定される。企業はグローバル文書の単なる流用に依存するのではなく、ニュージーランド法人の事実関係や事業実態を適切に反映した同時文書化(contemporaneous documentation)の整備を進めることが求められる。

(著)Bronwen Chong
BDOニュージーランド

 

 ⅰShortfall penalty(過少申告ペナルティ):ニュージーランド税制において、本来納付すべき税額を過少に申告した場合に課されるペナルティである。ニュージーランド歳入庁(Inland Revenue)は、移転価格文書が不十分であり、その結果として移転価格調整が行われた場合には、過少申告ペナルティが課される可能性が高いとしている。また、適切な移転価格文書を作成していない場合や、明らかに不適切な移転価格を容認した場合には、「重大な不注意(gross carelessness)」に該当し、最大40%の過少申告ペナルティが適用される可能性があるとしている。
引用先:Transfer pricing documentation


※本記事はBDO New Zealandが提供するTax Newsletter「New Zealand - Inland Revenue Tightens Expectations on Transfer Pricing Documentation - BDO」の日本語訳です。用語や表現に対するチェックを行っていますが、正確性や完全性を保証するものではありません。正確な情報は原文記事(英語)をご確認ください。